退職したら損害賠償請求すると脅された。実際に払う必要はある?

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結論:通常の退職で賠償が認められることはまずない

「辞めるなら損害賠償を請求する」と言われても、多くの場合は実際に支払う法的義務は発生しません。労働基準法16条は、労働契約の不履行について違約金や損害賠償額をあらかじめ定めることを禁止しており、退職そのものを理由に会社が一方的に金額を決めて請求することはできません。実際に賠償が認められるのは、引き継ぎを一切放棄して会社に具体的な損害を与えたなど、極めて限定的なケースに限られます。

状況賠償が認められる可能性
通常の手順で退職した(2週間前に申し出た等)ほぼなし
引き継ぎが多少不十分だった低い(悪質性・因果関係の立証が必要)
引き継ぎを一切せず失踪し、具体的な損害が生じたあり得る(実際に認容された例がある)
有期契約を正当な理由なく契約途中で破った状況によりあり得る

根拠:労働基準法16条(賠償予定の禁止)

労働基準法16条は「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めています。つまり、就業規則や誓約書に「退職時は罰金〇〇万円」「即日退職の場合は違約金〇〇円」といった条項があっても、その部分は無効です。会社が請求できるとしても、それは事前に決めた金額ではなく、実際に生じた損害を個別に立証した場合に限られます。

また、民法627条により、期間の定めのない雇用契約は退職の申し入れから2週間で終了します。ルールに沿って退職を申し出ている限り、退職という行為自体が契約違反にあたることはありません。

実際に賠償が認められた稀な判例

賠償が認められた例がまったくないわけではありません。ただし、いずれも「通常の退職」の範囲を大きく超えた、極端なケースです。

ケイズインターナショナル事件(東京地判平成4年9月30日・労働判例616号)では、入社直後に突然出社しなくなり、会社が求人広告費などの損害を被ったとして、200万円の請求に対し70万円の賠償が認容されました。

また、業務の引き継ぎを一切行わないまま失踪し、その後も会社と連絡を取らなかった従業員について、480万円の損害賠償請求が認められた裁判例も報告されています。いずれも「引き継ぎを完全に放棄した」「連絡を絶った」など、通常の退職手続きとは大きくかけ離れた事情がある点に注意してください。

逆に言えば、退職の意思を伝え、常識的な範囲で引き継ぎをしようとしていれば、賠償責任を負う可能性は極めて低いということです。

脅されたときの対応

「損害賠償を請求する」「訴える」といった発言をされた場合は、まず落ち着いて対応することが重要です。

発言の内容は日時とともにメモに残し、可能であれば録音しておきましょう。感情的に反論せず、退職の意思表示自体は淡々と続けることが大切です。退職届は内容証明郵便で送付し、意思表示をした事実を証拠化しておくと安心です。

会社が本当に法的手続きを取る様子であれば、一人で抱え込まず、労働局の総合労働相談コーナーや弁護士に相談してください。多くの場合、実際に提訴に至ることは稀ですが、不安な状態が続くようなら早めに第三者を頼るのが得策です。

弁護士系退職代行の出番

損害賠償をちらつかせるような強い引き止めがある場合、自分だけで会社とやり取りを続けるのは精神的な負担が大きくなります。特にこうしたケースでは、法律的な交渉ができる弁護士対応の退職代行や、労働組合が運営する退職代行を選ぶと安心です。運営主体ごとの違いは退職代行の選び方まとめで解説しています。

参考文献

  • 労働基準法16条
  • 民法627条
  • ケイズインターナショナル事件(東京地判平成4年9月30日・労働判例616号)

最終更新:2026年7月

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この記事を書いた人

退職代行データベース編集部。労働法・退職代行サービスに関する情報を、実務的かつ中立的な視点でまとめています。

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