事務職を辞めたいとき|属人化した業務の引き継ぎ方と退職の法的な進め方

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目次

結論早見表

事務職が退職できるかどうかは、法的には明確です。以下の表をご覧ください。

状況辞められるか根拠
無期雇用で退職希望はい民法627条1項
会社から「代わりがいない」と言われた法的には辞められる民法627条1項
「辞めたら損害賠償」と言われたあらかじめ定めることは禁止労働基準法16条

根拠となるのは次の条文です。期間の定めのない雇用(正社員など)であれば、退職の申し入れから二週間の経過で雇用は終了します。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

民法627条1項

また、「辞めたら損害賠償を請求する」と言われるケースがありますが、労働基準法16条は、労働契約の不履行についてあらかじめ違約金や損害賠償額を定めておくことを禁止しています。実際の損害の賠償請求そのものが一律に禁止されているわけではないものの、退職を理由とする賠償が認められるのは極めて限定的と一般に解されています。

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

労働基準法16条

なお、契約社員など有期契約の場合はルールが異なります。本記事は主に期間の定めのない雇用を前提としています。

事務職が辞めにくいのは、あなたのせいではない

事務職は業務が属人化しやすく、ファイルの保管場所から月次処理の細かな手順まで、「あなたにしか分からない仕事」が自然と積み重なっていきます。そのため「代わりがいない」が引き止めの材料になりやすい職種ですが、業務が特定の個人に依存しない体制を作ること、つまり人員配置と業務分担は本来会社側の責任です。業務一覧や手順書を書面で残せば引き継ぎへの配慮としては十分であり、これはあなたの問題ではなく、職場の体制の問題です。

事務職でよくある引き止めパターンと返し方

「代わりがいない」。これは退職をためらわせる最も一般的なフレーズです。法的には何の拘束力も持ちません。民法627条1項により、二週間の予告で退職できます。

「後任が育つまで待ってほしい」。これも同様です。人材育成の計画は会社側で立てるべきで、あなたが無限に待つ義務はありません。

「今は人手不足だから辞められない」。繁忙期の言い分ですが、これで退職を止めることはできません。むしろ人手不足なら、早めに採用・教育を進めるべきです。こうした言い方に対する詳しい対処法は引き止めへの対処法で解説しています。大切なのは、理由がどうであれ、民法627条1項により退職の申し入れから二週間で雇用は終了することです。

返し方としては、退職の意思が変わらないことを短く伝え、退職日を明確にするのが基本です。口頭だけでなく、退職届やメールなど日付の残る形で申し入れを行っておくと、「言った・言わない」の争いを避けられます。引き止めに応じて退職日を延ばすかどうかは、あなたの自由です。

手続き上の注意点

引き継ぎ資料の作り方

退職を伝える際に、業務の引き継ぎ資料を書面で作成しておくことが重要です。具体的には、日々行っている業務の一覧、各業務の手順書、システムやサービスのパスワード・アクセス権の所在一覧などです。

業務一覧には、毎日行っている定型業務から、月ごと・四半期ごと・年ごとの業務まで、カレンダー形式で記載するのが分かりやすいでしょう。手順書には、スクリーンショットを入れるなど、後任者が実際に操作できるレベルの詳しさが求められます。

これらを書面で残しておけば、引き継ぎへの配慮としては十分と考えられます。退職の効力そのものは、引き継ぎの完成度にかかわらず、民法627条1項に基づく申し入れから二週間の経過で生じます。会社が「資料が足りない」と言い続けても、無限に対応する義務はありません。

繁忙期と退職時期

決算時期や年末調整の時期と重ならないよう退職日を調整してほしい、という申し出を受ける場合があります。そうした申し出に応じるかどうかは、あなた自身の判断です。法的に義務があるわけではありません。退職日をずらす必要がなければ、希望する時期に辞めて構いません。

ただし、職場環境によっては、業務引き継ぎを確実にするため、繁忙期の終わりまで待つという選択肢もあります。これはあなたの判断ですし、義務ではない配慮です。

貸与品の返却と私物の整理

退職時には、社員証・入館証・鍵・貸与PCなどの貸与品を返却します。特に事務職は、金庫や書庫の鍵、各種システムの管理者権限など、預かっているものが多くなりがちです。返却漏れがあると退職後に連絡が必要になるため、引き継ぎ資料とあわせて貸与品の一覧も作っておくとスムーズです。あわせて、業務データや顧客情報を私的に持ち出さないことも重要です。

有給休暇の消化と時季変更権

退職前に有給休暇の消化を申し出た場合、会社は「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り、別の時期への変更を求めること(時季変更権)ができます。

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

労働基準法39条5項

ただし、退職日以降には別の時期がないため、退職直前の年休消化に対しては時季変更権を行使する余地が限定的と一般に解されています。つまり、退職日の直前に残りの有給休暇を全て消化する旨を申し出た場合、会社が一方的にそれを拒否することは難しいということです。

派遣事務の場合

派遣事務として働いている場合、雇用契約を結んでいるのは派遣会社です。退職の申し出は派遣先企業ではなく、派遣会社に対して行う必要があります。派遣先から「今は困る」と言われても、退職の相手方はあくまで雇用主である派遣会社です。なお、派遣は有期契約であることも多く、その場合は期間の定めのない雇用とは条件が異なるため、まず自分の雇用契約の内容を確認してください。

事務職の職種別事情

一般事務、経理、人事、営業事務、総務事務など、事務職の中でも業務内容や退職時の課題は大きく異なります。一般事務であれば単純な業務が多く引き継ぎしやすいかもしれませんが、経理や人事は専門性が高く、属人化のリスクがより大きいです。各職種別の詳しい事情、特に何を引き継ぎ資料に盛り込むべきかなどについては、今後順次公開予定です。

たとえば経理であれば月次・年次の決算処理や支払業務のスケジュール、人事であれば給与計算や入退社手続きの締め日、営業事務であれば受発注や請求のフローなど、職種ごとに引き継ぎの中心となる業務が異なります。自分の担当業務のうち「止まると困るもの」から優先的に書面化していくと、引き継ぎ資料が効率よく作れます。

退職代行を使う場合の注意

退職を自分で切り出しにくい場合、退職代行業者の利用を検討する人も多いでしょう。事務職は特に、日々の細かな業務調整が重要だからこそ、直接言い出しにくいと感じるかもしれません。

退職代行には弁護士が運営するもの、労働組合が運営するもの、民間企業が運営するものがあり、対応できる範囲が異なります。弁護士事務所の場合、交渉や訴訟対応まで可能です。労働組合の場合は、団体交渉権を背景に会社と交渉できます。民間企業の場合は、退職の意思伝達までが基本です。詳しくは退職代行の運営主体と違いで解説しています。また、退職代行を利用した場合の全体的な流れについては、退職代行の流れを参考にしてください。

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参考文献

最終更新: 2026年8月

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この記事を書いた人

深町 悠のアバター 深町 悠 フリーランスライター

フリーランスライターとして複数のメディアで執筆に携わる。退職代行データベースでは、記事を作成する際に法令や厚生労働省の公開情報など一次情報にあたることを徹底している。

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