訪問介護ヘルパーを辞めたいとき|担当の引き継ぎと直行直帰の働き方

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訪問介護は、利用者の自宅へ一人で向かい、直行直帰で一日が終わることも多い働き方です。同僚と顔を合わせる機会が少ないため、辞めたいと思ったときに誰にどう切り出せばよいか分からなくなることがあります。この記事では、退職を考えたときに整理しておきたい法的な前提と、担当の引き継ぎ・移動時間の確認・返却物の扱いをまとめます。介護職全体の共通事項は介護職を辞めたいときにあります。

目次

結論:先に押さえておきたいこと

気になること基本的な考え方確認先・根拠
いつ辞められるのか期間の定めのない雇用であれば、解約の申入れの日から2週間の経過によって雇用が終了する民法627条1項
誰に伝えるのか雇用契約を結んだ事業所に伝える。利用者やその家族に直接伝える義務はない雇用契約書の使用者欄
「利用者が困る」と言われたサービスを続ける体制を整えるのは事業者の側の役割(条文ではなく、事業者と労働者の役割の整理)
研修費の返還を求められたあらかじめ違約金や賠償額を決めておく契約は禁止されている。実際の扱いは契約内容による労働基準法16条
移動時間や手当が支払われていない賃金は全額を支払うのが原則。移動や待機が労働時間にあたるかは実態に応じて別途判断される全額払いは労働基準法24条1項/労働時間にあたるかは条文ではなく実態による判断
退職前に有給を使いたい労働者が請求した時季に与えるのが原則。ただし例外の定めがある労働基準法39条5項

訪問介護で辞めにくいのは、あなたのせいではない

訪問介護は担当が利用者ごとに固定されやすく、あなたが抜けることが特定の人の生活に直接つながって見える働き方です。加えて直行直帰が中心で、同じ立場の同僚と話す機会が少なく、迷いを相談できる相手が身近にいない状況も生まれます。ただし、人員を確保して体制をつくるのは事業者の役割であり、これはあなたの責任ではなく、職場の体制の問題です。

伝える相手は、利用者ではなく事業所

期間の定めのない雇用契約であれば、退職の申入れについて民法に次の定めがあります。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。(民法627条1項)

退職の申入れをする相手は、雇用契約を結んでいる事業所です。担当している利用者や家族に、あなたから直接説明しなければならないわけではありません。誰がいつどう伝えるかは事業者の側で決めることになります。

この規定は、後任のヘルパーが決まっているかどうかも条件にしていません。担当をどう組み替えるかは事業者が判断することであり、それが進んでいないことを理由に退職の申入れが無効になるわけではないと一般に解されています。ただし就業規則に予告期間がある場合、その期間と民法627条1項のどちらが優先するかは見解が分かれており、一律に断定することはできません。実務としては就業規則の期間を目安に日程を組むのが現実的です。引き止めへの対応は退職の引き止めへの対処で整理しています。

担当の引き継ぎで残しておきたいこと

訪問介護の引き継ぎは、記録に残っている内容よりも、実際に訪問している人だけが知っている情報のほうが多くなりがちです。次の点を書き出しておくと、後任が現場で迷いにくくなります。

  • 訪問時の手順と、その順番にしている理由
  • 住宅の状況(鍵の受け渡し方法、駐車できる場所、玄関周りの注意点)
  • ご本人・家族との連絡の取り方と、伝えるときに気をつけていること
  • 体調や生活の変化で気づいた点と、そのとき誰に報告したか
  • 他の事業者や関係者との連絡先と、どの用件をどこに伝えるかの対応表

引き継ぎの分量や形式は法律で決まっているものではなく、完璧な資料をつくることが退職の条件になるわけでもありません。ただ、記録として残しておけば「引き継ぎをしなかった」という主張に対して事実で答えられます。書いたものは手元に置いたままにせず、事業所へ渡した記録を残してください。

研修費・資格取得費の返還を求められたとき

入職時に資格の取得費用や研修費を事業所が負担し、「一定期間働かなければ返還する」という取り決めがある場合があります。この扱いには、労働基準法の次の条文が関係します。

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。(労働基準法16条)

この条文が禁じているのは、あらかじめ違約金や賠償額を決めておくことです。研修費の返還の取り決めがこれにあたるかは、費用の性質(業務命令か、本人の希望による自己啓発か)や返還の条件によって判断が分かれ、有効と扱われることもあります。断定はできないため、返還を求められた場合はその場で応じず、契約書や誓約書の記載を確認したうえで、労働基準監督署の総合労働相談コーナーや弁護士に相談してください。詳しくは退職時の損害賠償請求にまとめています。

移動時間・待機時間の賃金を確認する

訪問のあいだの移動や次の訪問までの待機について、賃金が支払われているかは、退職前に確認しておきたい点です。賃金の支払方法について、労働基準法には次の定めがあります。

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。(労働基準法24条1項)

移動や待機の時間が労働時間にあたるかどうかは、事業所の指示の程度など実態に応じて判断されるもので、一律に決まるものではありません。まずは給与明細と勤務記録を突き合わせ、記録が手元になければ退職前に写しをとっておくと、後から確認しやすくなります。疑問があれば労働基準監督署の総合労働相談コーナーが相談先になります。

有給休暇と、返却するもの

年次有給休暇について、労働基準法には次の定めがあります。

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。(労働基準法39条5項)

ただし書きにある「他の時季に与える」ことを時季変更権と呼びますが、退職日より後には与えるべき他の時季が存在しないため、退職直前の年休の請求に対してこの権利を行使できる余地は限られると一般に解されています。訪問予定が組まれる前に申し出ると調整がしやすくなります。断られた場合の考え方は有給休暇を拒否されたときで整理しています。

返却するものは、事業所から預かっている鍵、記録用の端末や携帯電話、身分証、支給品、訪問記録の用紙などが考えられます。とくに鍵と記録類は、返した日と受け取った相手を控えておくと、後から所在を尋ねられたときに答えられます。私物との切り分けは私物と貸与品の扱いを参照してください。

登録ヘルパー・パートとして働いている場合

訪問介護は、シフトに入る日や時間を都度決める形で働いている人も多い職場です。この場合も、雇用契約を結んでいるのであれば労働者として扱われます。まず契約書で、契約の種類と契約期間の定めの有無を確認してください。

契約期間が定められている契約(有期契約)は、期間の定めのない雇用とは扱いが異なります。上で引用した民法627条1項は期間の定めのない雇用についての規定であり、有期契約には直接あてはまりません。業務委託の場合も、労働基準法が原則として適用されず扱いが異なります。パート・アルバイトの立場での退職はパート・アルバイトの退職にまとめています。

相談できる相手が身近にいないとき

直行直帰が中心の働き方では、事業所に立ち寄る機会が少なく、悩みを口に出す場面を持ちにくくなります。心身の不調が続いているときは、まず医療機関の受診を検討してください。働くことに関する相談先としては、厚生労働省の「こころの耳」や労働基準監督署の総合労働相談コーナーがあります。

退職の意思を自分で伝えることが難しい場合、退職代行を使う選択肢もあります。ただし運営主体(弁護士・労働組合・民間企業)によって対応できる範囲が異なるため、未払い賃金や研修費の返還をめぐる交渉が必要になりそうな場合は、依頼する前に運営主体ごとの違い料金データベースを確認してください。辞めるか続けるかを決めるのは、あくまであなたです。

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参考文献

最終更新:2026年8月

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この記事を書いた人

深町 悠のアバター 深町 悠 フリーランスライター

フリーランスライターとして複数のメディアで執筆に携わる。退職代行データベースでは、記事を作成する際に法令や厚生労働省の公開情報など一次情報にあたることを徹底している。

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