教員を年度途中で退職したい。公立と私立で異なる手続きの違い

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公立学校の教員は、他の職業とは適用される法律が異なります。この記事では公立・私立それぞれの退職ルールを分けて解説します。自分がどちらに該当するか確認しながら読み進めてください。

目次

まず結論:立場別の早見表

立場根拠となる法律退職のポイント
公立教員地方公務員法(労働基準法の一部は適用除外)任命権者(教育委員会)の承認により退職。校長経由で退職願を提出
私立教員(期間の定めなし)民法627条1項申し入れから2週間の経過で雇用が終了。一般企業の正社員と同じ枠組み
私立教員(有期・講師契約など)民法628条契約期間中の退職には「やむを得ない事由」が必要。まず契約書を確認

教員が辞めにくいのは、あなたのせいではない

担任制と年度単位で組まれる学校の体制では、一人の欠員が時間割や学級運営に直接影響するため、「子どもたちのために」という形の引き止めが起きやすい構造があります。しかし、教員の配置や補充の責任は設置者(自治体・学校法人)の側にあり、人手が足りないことは退職の自由を制限する法的な根拠にはなりません。これはあなた個人の問題ではなく、学校の体制の問題です。

結論:公立教員は地方公務員法の世界

公立学校の教員は地方公務員にあたり、地方公務員法58条3項により労働基準法の一部が適用除外とされています。そのため、民間企業の退職で根拠になる民法627条(2週間ルール)は、公立教員にはそのまま適用されません。自己都合で退職するには、任命権者(都道府県または市町村の教育委員会)による「承認」という行政処分が必要になります。

ただし、承認が下りないからといって、いつまでも辞められないわけではありません。日本国憲法が保障する職業選択の自由や、意に反する苦役の禁止という基本的人権があるため、組織側が退職を不当に拒み続けることは認められません。実務上は、時間はかかっても退職に至るケースがほとんどです。

退職願と任命権者の承認の実務

公立教員の退職は、まず校長など管理職に退職の意向を伝えるところから始まります。校長を通じて教育委員会に退職願が提出され、任命権者が承認することで正式に退職が成立するという流れです。民間企業の「退職届の提出=一方的な意思表示で足りる」という仕組みとは異なり、行政上の手続きを経る必要がある点を理解しておきましょう。

退職願は自治体所定の様式が用意されていることが多く、提出時期や宛名にも自治体ごとの定めがあります。所属校の事務担当または服務担当に様式を確認してから作成すると差し戻しを防げます。

年度途中退職の手順(管理職→教育委員会)

年度途中の退職は、後任の確保や担任の引き継ぎなど、学校運営への影響が大きいため、実務上は早めの相談が強く推奨されます。学期の区切りや人事異動のタイミングを踏まえて調整が入ることも多く、民間企業に比べて手続きの期間が長くなる傾向があります。

  1. 退職希望日と理由を整理する(伝える内容を短くまとめておく)
  2. 校長に相談し、退職の意向をはっきり伝える(伝えた日付を記録しておく)
  3. 自治体所定の様式で退職願を提出する
  4. 教育委員会の審査・承認を待つ(この間に引き継ぎを進める)
  5. 担任業務・校務分掌・保護者対応の引き継ぎを書面に残す

私立教員は労基法・民法の世界

私立学校の教員は、公立とは異なり労働基準法・民法が適用される雇用契約です。学校法人と労働者という一般的な労使関係にあたるため、期間の定めのない雇用契約であれば、民法627条1項により退職の申し入れから2週間で契約は終了します。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

(民法627条1項)

就業規則に「1ヶ月前までに申し出ること」といった規定がある場合に、就業規則と民法のどちらが優先するかについては争いがありますが、期間の定めのない雇用については民法627条1項の2週間が優先すると一般には解されています。詳しくは2週間ルールの解説記事を参照してください。私立教員の退職手続きは、基本的に一般企業の正社員と同じ枠組みで考えて問題ありません。

有期契約の講師(常勤講師・非常勤講師)の場合

私立学校の常勤講師・非常勤講師は、1年単位などの有期雇用契約であることが少なくありません。期間の定めのある契約の場合、契約期間中の退職は、民法628条の「やむを得ない事由」による解除が基本になります。

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

(民法628条)

「やむを得ない事由」に何が当たるかは条文には書かれておらず、一般には心身の不調や家族の介護などが挙げられますが、個別の事情によります。契約期間の満了を待って更新しないという選択肢も含め、まず契約書と就業規則を確認してください。なお、公立学校の臨時的任用や会計年度任用の講師は任用制度に基づく身分のため、退職の手続きは所属の教育委員会・服務担当に確認するのが確実です。

病休・休職という中間選択肢

「今すぐ辞める」以外に、病気休暇や休職という選択肢もあります。公立教員の場合、条例に基づき一定期間の病気休暇(給与が支給される期間)の後、分限休職(給与が減額されるが身分は維持される期間)に移行する制度が整っている自治体が多くあります。心身の状態によっては、退職を急いで判断する前に、まず休んで態勢を立て直すという選択肢も検討する価値があります。私立教員の場合も、就業規則に休職制度が定められているのが一般的です。

眠れない・出勤前に体調を崩すといった状態が続いている場合は、退職や休職の判断より先に、医療機関への受診を検討してください。厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」では、電話・SNS・メールの相談窓口が案内されています。

公務員は民間の退職代行が使えない点に注意

公立教員(公務員)の退職は、民間企業のような労働契約の解約ではなく行政処分(任命権者の承認)という性質を持つため、労働組合系や民間企業型の退職代行の多くは、公務員を対応対象外としています。これは各社の利用規約で明記されていることがほとんどです。公務員が退職代行を利用したい場合は、弁護士が対応する退職代行を選ぶ必要があります。私立教員であれば、一般的な労働者と同じく労働組合系・民間系の退職代行も利用できます。運営主体ごとの違いは退職代行の選び方まとめで解説していますので、依頼前に対応可否を必ず確認してください。

よくある質問

教育委員会の承認が下りるまでは出勤し続けなければいけませんか?

承認前に一方的に出勤をやめると、公務員の場合は服務上の問題を指摘されるおそれがあります。体調がすぐれない場合は、無断欠勤ではなく病気休暇などの制度を使えないか、まず管理職や服務担当に相談してください。

年度末(3月末)まで待たないと辞められませんか?

年度末まで待たなければならないという法律上の定めはありません。ただし公立教員は承認という手続きを経るため、時期の調整を求められることはあります。心身の状態が限界に近い場合は、退職時期の相談と並行して、病気休暇・休職の利用も検討してください。

退職金はどうなりますか?

退職金の額は、勤続年数・退職理由・給与額によって変わります。公立教員は自治体の条例、私立教員は学校法人の退職金規程によるため、金額や支給時期は所属の事務担当・共済組合に確認してください。

非常勤講師でも退職代行を使えますか?

公立学校の非常勤講師は公務員としての身分をもつ場合があり、その場合は民間・労働組合系の退職代行は対象外になるのが一般的です。私立学校の講師は民間の労働者として利用できる場合が多いものの、有期契約の場合は契約期間中の退職に制約があるため、依頼前に自分の契約形態を確認してください。

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参考文献

最終更新:2026年8月

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この記事を書いた人

深町 悠のアバター 深町 悠 フリーランスライター

フリーランスライターとして複数のメディアで執筆に携わる。退職代行データベースでは、記事を作成する際に法令や厚生労働省の公開情報など一次情報にあたることを徹底している。

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