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結論:年度途中でも退職できる
「年度の途中で辞めるのは無責任」というプレッシャーを感じている保育士の方は多いですが、法律上は年度途中であっても退職はできます。期間の定めのない雇用契約であれば民法627条1項の定めが当てはまり、これは保育士も他の職業と変わりません。年度の区切りや行事の有無は、この条文の条件になっていません。全体の流れは保育・教育職を辞めたいときにまとめています。
| 知りたいこと | 考え方 | 根拠・確認先 |
|---|---|---|
| 年度途中で辞めたい(期間の定めなし) | 解約の申入れから二週間を経過することで雇用が終了する | 民法627条1項 |
| 1年ごとの契約を途中で辞めたい | やむを得ない事由があるときは直ちに解除できる。事由にあたるかは個別の判断 | 民法628条 |
| 退職前に有給を消化したい | 労働者が請求する時季に与えるのが原則 | 労働基準法39条5項 |
| 最後の給与が振り込まれない | 権利者の請求があった場合の支払・返還について定めがある | 労働基準法23条1項 |
保育士が罪悪感を抱きやすい構造
保育士が退職に罪悪感を抱きやすいのには理由があります。担任制のクラスでは「自分が抜けると子どもたちが不安定になる」という責任感が強く働き、慢性的な人手不足の園では「代わりがいない」状況が実際にあるため、心理的ハードルが高くなりがちです。しかしこれは制度的な人員配置の問題であって、個人が抱え込むべき責任ではありません。園の体制の問題と、あなた個人の退職の権利は切り分けて考える必要があります。
「子どもたちのために」と自分の健康は別問題
「子どもたちのために頑張って」と言われると、辞めることへの罪悪感がさらに強まります。しかし、心身に無理を重ねた状態で保育を続けることは、長期的に見て子どもたちにとっても良い環境とは言えません。余裕のない状態で保育をするより、自分の心身を整えた上で保育に向き合う、あるいは別の環境で力を発揮する方が、結果的に子どもたちのためになるという考え方もできます。自分を犠牲にすることが「子どもたちのため」と直結するわけではありません。
眠れない、食欲がない、出勤前に体が動かないといった状態が続いている場合は、退職の段取りより先に医療機関の受診を検討してください。働く人向けの相談先は厚生労働省「こころの耳」にまとまっています。判断の目安は限界のサインと退職の判断もどうぞ。
まず確認すること:契約に期間の定めがあるか
保育の職場には、期間の定めのない契約と、年度ごとに区切った契約の両方があります。適用される条文が変わるので、雇用契約書や労働条件通知書の契約期間欄を先に確認してください。期間の定めがない場合の根拠は次の条文です。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。(民法627条1項)
後任が決まっているか、年度の途中かどうかは、この条文の条件になっていません。就業規則に「退職は◯か月前まで」といった定めがある場合にどちらが優先するかは見解が分かれる論点なので、まず園の定めに沿って伝えるほうが摩擦は少なくなります。年度ごとの契約を途中で辞める場合は、次の条文になります。
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。(民法628条)
「やむを得ない事由」が何を指すかは条文に書かれておらず、個別の事情で判断されます。後段に賠償責任の定めがある点も条文とセットで押さえてください。判断に迷う場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナー(無料)で事実関係を整理してから動くほうが安全です。公立の保育所に勤めている場合は、民間の園とは適用される法体系が異なり、実務は自治体の条例や規則によります。人事担当部署に手続きを確認してください。
年度途中退職の現実的な段取り
円滑に退職するためのポイントは、早めの相談と引き継ぎの書面化です。条文が定める期間より前に伝えておくと、後任の確保や引き継ぎの準備期間を取れるため、角が立ちにくくなります。
引き継ぎ資料は口頭だけでなく書面やデータで残しておきましょう。子ども一人ひとりの様子や配慮事項、年間行事の進行状況、保護者との連携事項などをまとめておくと、後任の負担を減らせますし、自分自身も「やることはやった」という区切りをつけやすくなります。
伝えるときは、次の四点をそろえておくと話が前に進みます。
- 退職する意思(相談ではなく通知の形で、はっきり伝える)
- 最終出勤日と、退職を希望する日
- 残っている有給休暇をどう充てたいか
- 引き継ぎ資料をいつまでに用意するか
引き止め典型パターンと返し方
「あなたが抜けたらクラスが回らない」「後任が見つかるまで待ってほしい」といった引き止めは、保育士の退職でよく起こります。前述のとおり、後任の確保は民法627条1項の条件になっていません。感謝の気持ちを伝えつつ、退職の意思と希望日は明確に伝え続けることが大切です。口頭だけでなく、退職の意思表示は書面(退職届)でも残しておきましょう。
言われ方ごとの受け止め方は退職の引き止めへの対処法、受け取ってもらえない場合の進め方は退職届を受け取ってもらえないときの手順にまとめています。
有給消化と、最後の給与・書類
残っている年次有給休暇を最終出勤日より後に充てたい場合は、退職の申し出と同じタイミングで希望を伝えます。
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。(労働基準法39条5項)
ただし書にある「他の時季」は、退職日より後には存在しません。そのため退職直前の請求に対して時季変更権を行使できる余地は限られると一般に解されています。断られた場合の整理は有給休暇を拒否されたときの考え方をご覧ください。
最後の給与や、園に預けている金品の扱いについても定めがあります。
使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。(労働基準法23条1項)
「権利者の請求があつた場合においては」という条件が付いている点が実務上の要点です。エプロンや名札などの貸与品の返却方法とあわせて、辞める連絡のときに受け取り方法を伝えておくと早く片づきます。返すもの・受け取るものの一覧は私物・貸与品の返却チェックリスト、雇用保険に加入していた場合の離職票の扱いは離職票がもらえないときの手順にまとめています。
限界なら退職代行という選択肢
園長や主任と直接話すこと自体が精神的な負担になっている場合は、退職代行を利用するのも一つの方法です。ただし運営主体によって根拠となる法律と対応範囲が異なります。弁護士・弁護士法人は、弁護士法72条が名宛人とする「弁護士又は弁護士法人でない者」にあたらないため、代理人として交渉できます。労働組合は労働組合法6条にもとづく交渉権限を持ち、正当な理由のない団体交渉の拒否は同法7条2号で禁じられています。民間企業については、園との交渉にあたる行為が弁護士法72条との関係で問題になると一般に解されているため、どこまで対応してもらえるかを依頼前に確認してください。運営主体ごとの違いは退職代行の選び方まとめ、各社の料金は退職代行の料金データベースで確認できます。掲載順は提携の有無に影響されません。
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参考文献
参考文献:e-Gov法令検索 民法/労働基準法/弁護士法/労働組合法/厚生労働省 総合労働相談コーナーのご案内/厚生労働省 こころの耳 最終更新:2026年8月


