退職時の私物・貸与品の返却|返すもの・受け取るものと郵送のやり方

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出社せずに退職する場合、私物と貸与品のやりとりはすべて郵送になります。何を返し、何を受け取るのかを先に整理しておくと、退職後に連絡を取り直す回数が減ります。健康保険証と年金手帳については制度が変わっているため、その点もあわせて確認します。

目次

結論:返すもの・受け取るもの(早見表)

区分もの扱い・確認先
返す社員証・入館証・鍵追跡できる方法で郵送する
返す制服・作業着クリーニングの要否を会社に確認する
返す業務用パソコン・スマートフォンデータの取り扱いを会社に確認してから送る
返す名刺(自分の分・取引先から預かった分)取引先の個人情報を含むため確実に返す
返す医療保険の資格確認に使う書類制度が変わっているため会社と保険者の案内に従う
受け取る離職票・源泉徴収票・雇用保険被保険者証会社に希望を伝えておく
受け取る年金手帳(会社に預けている場合)現在は新規発行されていない書類
受け取る給与明細の控え手元に残しておく

健康保険証と年金手帳は制度が変わっている

退職の解説記事の多くが「健康保険証を返却する」「年金手帳を受け取る」と書いていますが、どちらも前提が変わっています。ここを知らないまま準備すると、手元にない書類を探すことになります。

健康保険証

厚生労働省は、従来の健康保険証の有効期限が2025年12月1日で終了したことを公表しています。医療機関の受付では、マイナンバーカードの健康保険証利用登録をしている人は「マイナ保険証」を、していない人には保険者から交付される「資格確認書」を提示する仕組みです。

退職すると加入していた健康保険の資格を失うため、資格確認書の交付を受けている場合はその扱いを確認する必要があります。マイナンバーカードそのものは会社に返す性質のものではありません。手元にどの書類があるかによって対応が変わるため、会社と加入していた保険者の案内に従ってください。

年金手帳

日本年金機構によると、年金手帳は令和4年3月31日をもって廃止され、令和4年4月以降に初めて年金制度に加入する人には「基礎年金番号通知書」が発行されます。すでに年金手帳を持っている人には基礎年金番号通知書は発行されないため、引き続き年金手帳を保管することになります。

つまり、会社に年金手帳を預けている人は返してもらう必要があり、預けた覚えがない人はそもそも手帳ではなく通知書を持っている可能性があります。どちらの場合も、次の職場や国民年金の手続きで必要になるのは基礎年金番号なので、番号が分かる書類が手元にあるかを確認してください。

会社に預けたものを返してもらう

退職時の金品の返還については、労働基準法に定めがあります。

使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。(労働基準法23条1項)

前項の賃金又は金品に関して争がある場合においては、使用者は、異議のない部分を、同項の期間中に支払い、又は返還しなければならない。(同条2項)

この条文が動くのは「権利者の請求があった場合」です。黙って待っていれば返ってくる、という組み立てにはなっていません。返してほしいものがあるなら、何を返してほしいのかを具体的に伝える必要があります。

デスクに残した私物がこの条文でいう金品にあたるかは個別の判断になりますが、会社に預けたものを返してもらう場面の基本的な考え方として押さえておくと、話を進めやすくなります。

私物の回収方法3つ

デスクや個人ロッカーに私物が残っている場合、回収方法は主に3つあります。

  • 自分で取りに行く/引き止めなどが心配な場合は業務時間外や休日を指定します
  • 会社に着払いで郵送してもらう/送ってほしいものを事前に列挙して伝えます
  • 処分を依頼する/貴重品でなければ会社側で処分してもらうこともあります

退職代行を利用する場合は、私物の取り扱いについても業者を通じて会社に希望を伝えられます。どの方法をとるにしても、事前に持ち帰れるものは持ち帰っておくのがいちばん確実です。とくに次の3つは、後から返してもらうのに手間がかかります。

  • 資格の合格証・修了証など、再発行に手続きが要るもの
  • 私物のパソコンやスマートフォンに入れている業務用のデータ(会社の情報は残さない前提で整理しておく)
  • 常備薬・眼鏡など、なくて困るもの

貸与品の返し方

貸与品を郵送で返却する場合は、紛失・破損のリスクを避けるため、追跡可能な方法(レターパックや宅配便など)を利用するのが安全です。パソコンなど精密機器は緩衝材で梱包し、返却前に会社の指示に従ってデータの取り扱い(初期化の要否など)を確認しておくとトラブルを避けやすくなります。

あわせて、次の点を記録に残しておくと、後から「届いていない」という話になったときに説明できます。

  • 送ったものの一覧(同梱した書面にも書いておく)
  • 発送日と追跡番号
  • 送付先として指定された部署名と担当者名

返却が済んでいないと、それを理由に連絡が続くことがあります。先に返しておくほうが、結果的にやりとりが早く終わります。

制服代・研修費を請求されたとき

制服代や研修費用を理由に、退職時に金銭を請求されたり、給与から差し引かれたりすることがあります。この場面では、性質の違う2つの条文が関係します。

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。(労働基準法16条)

16条が禁じているのは、あらかじめ違約金や賠償額を定めておくことです。「途中で辞めたら研修費○万円」といった取り決めが先にある場合は、この条文との関係が問題になります。

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、(通貨以外のもので支払える場合について略)法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。(労働基準法24条1項)

24条1項は賃金の全額払いを定めたうえで、控除できる場合を限定しています。給与から一方的に差し引かれている場合は、この原則との関係が問題になります。

ただし、実際に生じた損害についての賠償請求そのものが一律に禁じられているわけではありません。請求の中身が何にあたるかで結論が変わるため、金額や経緯を書面で示してもらったうえで、応じる前に労働基準監督署や弁護士に相談してください。判断に迷う場合は退職を理由に損害賠償を請求されたときもあわせて確認できます。

退職代行を使う場合に伝えておくこと

会社と直接やりとりしない前提で進めるなら、依頼の時点で次の内容を伝えておくと、後から連絡を取り直さずに済みます。

  • 返却するものの一覧と、送付先として指定してほしい宛先
  • 回収してほしい私物の場所(デスクの引き出し、ロッカーの番号など)と、処分してよいもの
  • 受け取りたい書類(離職票を希望することは明示する)と、書類の送付先住所

離職票は希望を伝えていないと手続きが進まないことがあります。詳しくは離職票がもらえないときを参照してください。手続き全体の流れは退職代行の利用の流れ、依頼先の選び方は運営主体3類型料金データベースにまとめています。

よくある失敗と回避のしかた

  • 請求書の中身を確認せずに支払う/何に対する請求かを書面で示してもらってから判断します
  • 取引先から預かった名刺を手元に残す/他社の個人情報にあたるため確実に返します
  • 返してほしいものを伝えないまま最終出社日を過ぎる/23条1項は「権利者の請求があつた場合」を前提にしています

よくある質問

貸与品を返さないとどうなりますか

会社の所有物なので、返却をめぐるやりとりが続くことになります。退職そのものと返却は別の問題ですが、連絡を減らしたいのであれば先に返しておくほうが結果的に早く終わります。

郵送料は自分が負担するのですか

費用の負担について定めた条文はなく、会社の規定や個別の取り決めによります。着払いを認めている会社もあるため、送る前に確認してください。

私物を捨てられてしまった場合は

何をいつ処分したのかを含めて事実を確認するところから始まります。処分してよいものと残しておいてほしいものを事前に伝えておくと、この問題自体を避けられます。

制服はクリーニングしてから返すべきですか

クリーニングの要否を定めた条文はなく、会社の規定や貸与時の取り決めによります。費用を自己負担するのかどうかもあわせて、送る前に確認してください。

退職後の手続き全般は退職後にやること一覧、転職先への影響が気になる場合は退職代行を使うと転職で不利になる?もあわせて確認してください。

参考文献:労働基準法(e-Gov法令検索)厚生労働省「資格確認方法について」日本年金機構「基礎年金番号・基礎年金番号通知書・年金手帳について」厚生労働省 ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」 最終更新:2026年8月

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この記事を書いた人

深町 悠のアバター 深町 悠 フリーランスライター

フリーランスライターとして複数のメディアで執筆に携わる。退職代行データベースでは、記事を作成する際に法令や厚生労働省の公開情報など一次情報にあたることを徹底している。

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