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入社して間もない時期に辞めたいとき、迷いやすいのは「そもそも辞められるのか」と「履歴書に書くべきか」です。根拠になる条文を確認しながら手続きの順番までを整理します。
結論:試用期間中でも、退職の根拠になる条文は本採用後と同じ
| 状況 | 退職の進め方 | 根拠 |
|---|---|---|
| 期間の定めのない契約の試用期間中 | いつでも解約を申し入れできる(終了時期は627条1項のとおり) | 民法627条1項 |
| 契約期間の定めがある場合 | やむを得ない事由があれば直ちに解除できる | 民法628条 |
| 有期契約で附則137条の要件を満たす場合 | 使用者に申し出ればいつでも退職できる | 労基法附則137条 |
| 「14日以内なら即日で辞められる」 | 誤り(次の見出しで解説) | 労基法21条 |
試用期間は、多くの場合、期間の定めのない労働契約に置かれた最初の一定期間です。契約は入社日に成立しており、退職の根拠になる条文も本採用後と変わりません。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。(民法627条1項)
見落としやすいのが「期間の定めのない雇用であれば」という条件です。契約書に契約期間が書かれている場合は、別の条文で考えます。
「試用期間中は14日以内なら即日で辞められる」は誤読
これは労働基準法21条を読み違えた説明です。21条は、使用者が解雇するときの予告義務(同法20条)を適用しない場合を並べた条文です。
前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、(略)第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。
四 試の使用期間中の者(労働基準法21条)
主語は使用者で、労働者が自分から辞める場面の条文ではありません。試用期間中でも、自分から辞めるときの根拠は民法627条1項です。反対に「試用期間だから辞められない」という説明にも条文上の裏づけはありません(入社1ヶ月で辞めたいときの記事)。
契約に期間の定めがある場合は、根拠になる条文が変わる
「試用期間」と説明されていても、契約書上は期間の定めのある契約になっていることがあります。その場合の根拠は次の条文です。
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。(民法628条前段)
「やむを得ない事由」に何が当たるかは条文になく、一般には心身の不調や家族の事情などが挙げられますが、当てはまるかは個別の事情によります。また有期契約の一部については、労働基準法附則137条に次の定めがあります。
期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。(労働基準法附則137条)
適用対象は、上に引用した条文の要件を満たす有期契約に限られます。より短い期間の契約を反復更新している場合や、引用文中で除外されている労働者との契約は含まれません(契約期間がある働き方の記事/パートの退職の記事)。
退職を伝えるまでの順番と、記録の残し方
- 労働条件通知書または契約書で、契約期間の定めの有無を確認する
- 就業規則に退職の申し出についての定めがあるか確認する
- 直属の上司に伝える(書面という法律上の定めはないが、会社の様式があればそれに従う)
- 最終出社日と、書類・返却物の受け渡し方法を決める
伝えた事実を残したい場合は、差出人・日付・内容が記録に残る方法(内容証明郵便など)があります。ただし、送った時点で退職が成立するわけではありません。意思表示の効力が生じるのは相手方に到達した時であり(民法97条1項)、雇用が終了する時期は、期間の定めのない契約であれば上に引用した民法627条1項の定めによります。到達と終了は別のできごとです。全体の流れは退職手続きの流れの記事にまとめています。
働いた分の給与と、返すもの・受け取るもの
数日で辞めた場合でも、働いた分の賃金は支払われます。労働基準法24条1項は賃金の通貨払い・直接払い・全額払いを定めており、同項ただし書は、法令に別段の定めがある場合や、労働者の過半数で組織する労働組合等との書面による協定がある場合に、賃金の一部を控除して支払うことができると定めています。あらかじめ違約金や損害賠償額を定めておく契約は、同法16条により禁止されています。
また同法23条1項は、退職の場合において権利者の請求があったときは、賃金を支払い、労働者の権利に属する金品を返還しなければならないと定めています。請求がなければ起算しないので、こちらから返還を求めると確実です(私物・貸与品の返却の記事)。
試用期間中に年次有給休暇はあるか
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。(労働基準法39条1項)
法律上の年次有給休暇は、雇入れの日から一定期間の継続勤務と出勤率を満たしたときに発生します。それより短いうちに退職する場合、法定の年休はまだ発生していないのが通常です。会社が前倒しで付与していることもあるので就業規則を確認してください(詳しくは有給休暇を拒否されたときの記事)。
明示された労働条件と実際が違ったとき
労働基準法15条1項は、使用者に対し、労働契約の締結に際して賃金・労働時間その他の労働条件を明示することを義務づけています。そのうえで、同条2項に次の定めがあります。
前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。(労働基準法15条2項)
基準になるのは、契約の締結に際して明示された労働条件で、求人サイトや求人広告の表記一般ではありません。「相違する」といえるかの判断基準は条文になく、個別の事情によります。確かめたいときは厚生労働省の総合労働相談コーナー(各都道府県労働局や労働基準監督署内などに設置、予約不要・無料)に相談できます。
失業給付を受けられるかは、加入していた期間で決まる
基本手当は、被保険者が失業した場合において、離職の日以前二年間(略)に、次条の規定による被保険者期間が通算して十二箇月以上であつたときに、この款の定めるところにより、支給する。(雇用保険法13条1項。括弧内は算定対象期間を延長する定めのため省略)
短い期間で退職した場合、この受給資格を満たさないことがあります。ただし同条2項に読み替えの定めがあり、特定理由離職者や特定受給資格者に当たる場合は要件が異なります。判断するのはハローワークなので、離職票を受け取って窓口で確認してください(離職票がもらえないときの記事/失業保険の記事)。
履歴書に書くかどうかと、面接での説明
履歴書の様式や記載範囲を定めた法律はありません。「書かなければ違法」と一律に決まるものではなく、応募先が求める記載範囲に沿って判断します。判断材料になるのは、雇用保険や社会保険に加入していた場合、その記録が行政側に残る点です(雇用保険法7条は事業主に被保険者の資格取得・喪失の届出を義務づけています)。一方で、その記録を転職先が直接照会できる仕組みはありません。退職した会社に証明書を求めることもできます。
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(略)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
3 前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。(労働基準法22条1項・3項)
本人が請求したときに交付されるもので、請求していない事項を記入することはできません。条文上、会社が第三者へ職歴を伝えるために出す書類として定められたものでもありません(前職調査の実際を扱った記事)。なお、短期での離職が選考でどう扱われるかは応募先や職種によって異なり、一律の基準はありません。面接で経緯を聞かれたら、感情を交えず、確認できる事実に絞って説明できるよう整理しておくと答えやすくなります。
自分で言い出しにくいとき
入社してすぐの退職は、上司や人事に伝えるハードルが高く感じられます。会社と直接やり取りをしたくない場合、退職代行も選択肢のひとつです。試用期間中でも労働契約は成立しているため、それを理由に使えないということはありません。
ただし、運営主体によって対応できる範囲が異なります。弁護士法72条は、弁護士・弁護士法人でない者が報酬を得る目的で法律事務を取り扱うことを業とすることを禁じており、退職日や未払い賃金のやり取りは一般にここに含まれると解されています。同条の「他の法律に別段の定めがある場合」という留保と、労働組合の代表者などが組合員のために使用者と交渉する権限を持つこと(労働組合法6条)が、労働組合型の根拠とされています。3類型の違いは運営主体の早見表、料金は料金データベースで確認できます。
就業規則に「退職は1か月前までに」とある場合
就業規則の予告期間と民法627条1項の関係は見解が分かれる論点で、一律には決まりません。まずは就業規則の定めに沿って伝えることを検討し、事情があって従えない場合は総合労働相談コーナーに相談してください(引き止めへの対処の記事)。
参考文献:e-Gov法令検索 民法/労働基準法/雇用保険法/厚生労働省 総合労働相談コーナーのご案内/ハローワークインターネットサービス 基本手当について 最終更新:2026年8月

