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派遣社員として働いていて契約の途中で辞めたくなったとき、最初につまずきやすいのは「誰に伝えればいいのか」と「契約期間の途中でも辞められるのか」の2点です。この記事では、雇用契約を結ぶ会社と働く職場が分かれている派遣の仕組みを前提に、申し出先と根拠条文、実務の進め方を整理します。
結論:伝える相手は派遣会社、根拠は契約期間の有無で変わる
| 状況 | 整理 | 根拠 |
|---|---|---|
| 退職を伝える相手 | 雇用契約を結んでいる派遣会社(派遣元) | 労働者派遣法2条1号 |
| 派遣会社との契約に期間の定めがあり、その途中で辞めたい | やむを得ない事由があるときは直ちに解除できる。当たらない場合は派遣会社との合意による終了が現実的 | 民法628条 |
| 契約期間が1年を超える契約で、初日から1年を経過した | 派遣会社に申し出ることで退職できる | 労働基準法附則137条 |
| 派遣会社との契約に期間の定めがない(無期雇用派遣など) | 解約の申入れから2週間の経過で雇用が終了する | 民法627条1項 |
| 派遣先の職場で困っていることがある | 派遣先は苦情を派遣元に通知し、連携して処理を図る | 労働者派遣法40条1項 |
派遣社員が辞めにくいのは、あなたのせいではない
派遣では、毎日顔を合わせるのは派遣先の人たちで、雇用契約の相手である派遣会社の担当者とは接する機会が限られます。そのため、辞めたいと思っても誰に言えばよいのかが見えにくく、「派遣先に迷惑をかける」という感覚だけが先に立ちやすくなります。契約が期間ごとに区切られている場合は、その区切りまで待つべきかという迷いも加わります。これは意思の弱さではなく、雇用と職場が分かれた三者の関係から生じるものです。
まず確認:雇用主は派遣先ではなく派遣会社
労働者派遣法は、労働者派遣を次のように定義しています。
一 労働者派遣 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。
労働者派遣法2条1号
「自己の雇用する労働者」とあるとおり、雇用関係があるのは派遣会社とあなたの間です。派遣先は業務の指揮命令をする立場で、雇用契約の当事者ではありません。したがって、退職の意思を伝える相手も、退職日を調整する相手も派遣会社になります。派遣先の上司にだけ話しても、雇用契約の終了の手続きは進みません。
連絡先は、派遣会社の営業担当者やコーディネーターなど、ふだん契約や勤怠の窓口になっている人です。分からない場合は、派遣会社から受け取った雇用契約書などの書面で連絡先を確認してください。
契約期間の定めがあるかで、根拠条文が変わる
確認するのは派遣先との契約ではなく、あなたと派遣会社の雇用契約の「契約期間」の欄です。
期間の定めがある場合
契約期間の途中で辞める場合に関係するのは民法628条です。
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
民法628条
「やむを得ない事由」の具体例は条文に書かれていません。一般には心身の不調や家族の介護などが挙げられますが、自分の事情が当たるかどうかは個別に判断されます。後段の損害賠償は、その事由が当事者の一方の過失によって生じた場合の定めです。
契約期間が1年を超える契約であれば、労働基準法附則137条により、契約期間の初日から1年を経過した日以後は、使用者に申し出ることでいつでも退職できます。対象は「その期間が一年を超える」契約に限られ、1年以下の契約を更新し続けている場合は含まれません。一定の事業の完了に必要な期間を定める契約と、労働基準法14条1項各号に規定する労働者も条文上除かれています。条文の全文と詳しい読み方は有期契約の途中退職(期間工の場合)にまとめています。
期間の定めがない場合
派遣会社に期間の定めなく雇用されている場合(無期雇用派遣など)は、民法627条1項が根拠になります。期間の定めのない雇用であれば、解約の申入れの日から2週間の経過で雇用は終了します。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法627条1項
派遣先での就業が終わる日と、派遣会社との雇用が終わる日が同じとは限らないため、両方の日付を派遣会社に確認してください。
契約の途中で辞めるときの進め方
期間の定めがあり、やむを得ない事由にも附則137条にも当たらない場合は、派遣会社と話し合って合意で契約を終了させる形が現実的です。合意による退職は、法律が手順を定めているものではありません。伝え方と記録の残し方が結果を左右します。
- 雇用契約書で、契約期間・更新の有無・退職に関する取り決めを確認する
- 派遣会社の担当者に、辞めたいことと希望する最終出勤日・退職日を自分から示す
- 体調など、やむを得ない事由に当たりうる事情があれば、その事情も簡潔に伝える
- 派遣先への伝え方と最終出勤日の調整は、派遣会社と相談して決める
- 伝えた日付・相手・返答を、メールやメモで記録に残す
契約満了が近い場合は、途中で解除するのではなく、次の更新をしない意思を早めに派遣会社へ伝えるという方法もあります。期間の満了で区切る場合は、途中解除の論点とは別の話になります。引き止められたときの考え方は退職の引き止めへの対応で整理しています。
辞めたい理由が派遣先の職場にあるとき
辞めたい理由が派遣先での扱いや人間関係にある場合、退職の前に取れる手段もあります。労働者派遣法40条1項は、派遣先に次の対応を求めています。
派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者から当該派遣就業に関し、苦情の申出を受けたときは、当該苦情の内容を当該派遣元事業主に通知するとともに、当該派遣元事業主との密接な連携の下に、誠意をもつて、遅滞なく、当該苦情の適切かつ迅速な処理を図らなければならない。
労働者派遣法40条1項
派遣先の問題であっても、まず派遣会社の担当者に事実を伝えてください。就業先の変更などの相談ができるかどうかも、派遣会社に確認できます。派遣会社との話し合いが進まない場合は、都道府県労働局や労働基準監督署などに設置されている「総合労働相談コーナー」で相談できます。
損害賠償・有給休暇・貸与品の扱い
「途中で辞めたら損害賠償を請求する」と言われた場合に関係するのは労働基準法16条です。
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
労働基準法16条
16条が禁じているのは、あらかじめ違約金や賠償額を定めておくことです。実際に生じた損害の賠償が認められるかどうかは、損害の発生と因果関係を会社側が立証できるかによって個別に判断されます。詳しくは退職と損害賠償を参照してください。
有給休暇が残っている場合、申請する相手も雇用主である派遣会社です。労働基準法39条5項は、労働者の請求する時季に有給休暇を与えることを原則とし、事業の正常な運営を妨げる場合には他の時季に変更できるとしています。退職日以降には変更先の時季がないため、退職直前の消化に対して時季変更権を行使できる余地は限られると一般に解されています。断られたときの考え方は有給を拒否されたときにまとめています。
派遣先から借りている入館証・制服・端末などは、返却の方法と日付を派遣会社と確認してから返してください。返却物の整理は私物・貸与品の扱いで扱っています。
退職代行を使う場合の連絡先
自分で伝えるのが難しい場合は、退職代行という選択肢もあります。その場合も、連絡する相手は派遣先ではなく雇用主の派遣会社です。依頼時は派遣会社の名称と担当者の連絡先を手元にそろえておきます。未払い賃金の請求や退職日の交渉が必要になりそうな場合は、運営主体によってできる範囲が違うため、料金より先に退職代行の運営主体3類型を確認してください。料金は退職代行の料金データベース、依頼後の流れは退職代行の利用の流れで整理しています。
心身の不調があるとき
不調が続いている場合は、契約の整理より先に医療機関の受診を検討してください。働く人のメンタルヘルスについては、厚生労働省のポータルサイト「こころの耳」で相談窓口が案内されています。判断の目安は限界のサインで整理しています。
似た立場の人へ
- 雇用形態から確認する:会社員(正社員)の場合/パート・アルバイトの場合/期間工・有期契約の場合
- 時期から確認する:試用期間中に辞めたい
- ほかの職業を探す:職業から探す
参考文献
- 民法(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 労働基準法(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html
- 厚生労働省「こころの耳」https://kokoro.mhlw.go.jp/
最終更新:2026年9月

