※本記事にはプロモーションが含まれます。
シフトの多さや人間関係のつらさから「もう連絡せずに辞めたい」と考える飲食店の勤務者は少なくありません。ただし何も伝えないまま出社しなくなると、最後の給与や書類のやり取りが宙に浮いたまま残ります。
結論:先に確認することの早見表
| 知りたいこと | 考え方 | 根拠・確認先 |
|---|---|---|
| 期間の定めのない契約を辞めたい | 解約の申入れから二週間を経過することで雇用が終了すると定められている | 民法627条1項 |
| 期間の定めのある契約を途中で辞めたい | やむを得ない事由があるときは直ちに解除できると定められている。事由にあたるかは個別の判断 | 民法628条 |
| 「急に辞めたら罰金」と言われた | 違約金や賠償額をあらかじめ定める契約は禁止されている | 労働基準法16条 |
| 制服代などを給与から差し引かれた | 賃金の全額払いの原則との関係が問題になる | 労働基準法24条1項 |
| 最後の給与や私物が戻ってこない | 権利者の請求があった場合の支払・返還について定めがある | 労働基準法23条1項 |
飲食の職場で言い出しにくいのは、あなたのせいではない
飲食店はシフトが個人単位で組まれるため、一人抜けると穴が目に見える形で残り、「自分が言い出したせいで店が回らなくなる」と感じやすい構造があります。少人数の店舗では店長との距離が近く、相談できる相手が同じ職場の中にしかいないことも珍しくありません。ただし人員を確保して営業できる体制をつくるのは事業者の役割で、これはあなたの問題ではなく職場の体制の問題です。
眠れない、出勤前に体が動かないといった状態が続いている場合は、手続きより先に医療機関の受診を検討してください。働く人向けの相談先は厚生労働省「こころの耳」にまとまっています。判断の目安は限界のサインと退職の判断もどうぞ。
連絡せずに来なくなると、実務上どうなるか
連絡がないまま出勤しない状態が続くと、就業規則の定めによっては無断欠勤として扱われ、懲戒の対象とされることがあります。どの処分が有効かは事情によって判断が分かれる論点なので、ここで結果を言い切ることはできません。
影響が大きいのは、処分そのものより手続きが止まることのほうです。最後の給与の受け取り方法、ロッカーに残した私物、制服などの貸与品、離職票や源泉徴収票の送付先。これらはいずれも連絡が取れることを前提に進みます。本人と連絡がつかない場合、届け出た緊急連絡先へ連絡が入ることもあります。
すでに何日か連絡せずに休んでしまった場合でも、これらのやり取りはこれから発生するものなので、連絡を再開する意味はあります。休んだ理由の説明より、退職の意思と書類の送付先を先に伝えるほうが話が進みます。
まず確認すること:契約に期間の定めがあるか
飲食のアルバイト・パートには、期間の定めのない契約と、期間を区切った契約の両方があります。適用される条文が変わるので、雇用契約書や労働条件通知書の契約期間欄を先に見てください。期間の定めがない場合の根拠は次の条文です。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。(民法627条1項)
後任が決まっているか、繁忙期かどうかは、この条文の条件になっていません。就業規則に「退職は一か月前まで」といった定めがある場合にどちらが優先するかは見解が分かれる論点なので、まず職場の定めに沿って伝える順番が現実的です。期間の定めがある契約を途中で辞める場合は、次の条文になります。
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。(民法628条)
「やむを得ない事由」が何を指すかは条文に書かれておらず、個別の事情で判断されます。後段に賠償責任の定めがある点も条文とセットで押さえてください。迷う場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナー(無料)で事実関係を整理してから動くほうが安全です。なお有期契約には労働基準法附則137条の定めもありますが、対象は条文上「その期間が一年を超えるもの」に限られます。
出社せずに辞めたいときの伝え方
伝える相手は、雇用契約を結んでいる相手方です。個人経営の店なら店主、チェーンなら店長のほかに本部の窓口が指定されていることもあるので、契約書の使用者欄を確認してください。伝える内容は次の四点で足ります。
- 退職する意思(相談ではなく通知の形で、はっきり書く)
- 最終出勤日と、退職を希望する日
- 制服など貸与品の返却方法(郵送でよいかを確認する)
- 最後の給与の受け取り方法と、書類の送付先住所
手段は記録が残るものを選んでください。電話で伝えた場合も、あとから同じ内容をメールやメッセージで送っておくと、いつ何を伝えたかが残ります。受け取ってもらえない場面での進め方は退職届を受け取ってもらえないときの手順にまとめています。残っている年次有給休暇を最終出勤日より後に充てたい場合は、同じ連絡にその希望も入れます。有給が残っていない場合は、申し入れから契約が終了するまでの期間が欠勤扱いになることもあります。
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。(労働基準法39条5項)
ただし書にある「他の時季」は、退職日より後には存在しません。そのため退職直前の請求に対して時季変更権を行使できる余地は限られると一般に解されています。断られた場合の整理は有給休暇を拒否されたときの考え方をご覧ください。
「代わりを探してから」と言われたとき
シフトが埋まらないことを理由に、退職を先延ばしにされることがあります。ただ、民法627条1項は後任の確保を退職の条件にしていません。言われ方ごとの受け止め方は退職の引き止めへの対処法、申し出から退職日までの全体像は退職代行を使う場合の流れにまとめています。
損害賠償やお金の請求を持ち出されたとき
「急に辞めたら店の損害を請求する」「無断で休んだら罰金」と言われることがあります。金額をあらかじめ決めておく形の取り決めについては、次の条文があります。
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。(労働基準法16条)
禁じられているのは、違約金や賠償額をあらかじめ定めることです。実際に生じた損害についての賠償請求そのものを一律に禁じた規定ではないため、「請求されても必ず認められない」とは言い切れません。請求を受けた場合の整理は退職で損害賠償を請求されたときの考え方にまとめています。制服代・まかない代・研修費などを給与から差し引かれている場合は、別の条文が関わります。
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。(労働基準法24条1項前段)
同項ただし書は、法令に別段の定めがある場合や、労働者の過半数で組織する労働組合等との書面による協定がある場合に、賃金の一部を控除して支払うことができると定めています。一方的に差し引かれている場合は、給与明細を保管したうえで労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談してください。
最後の給与・貸与品・書類のやり取り
使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。(労働基準法23条1項)
要点は「権利者の請求があつた場合においては」という条件が付いていることです。黙っていれば自動的に進むわけではないので、辞める連絡と同じタイミングで、最後の給与の受け取り方法も伝えておくほうが早く片づきます。
制服・名札・鍵などの貸与品は、郵送でよいかを確認したうえで追跡できる方法で送ると、返した記録が残ります。ロッカーの私物も同じ連絡で確認してください。一覧は私物・貸与品の返却チェックリストにあります。退職したことを示す書類は、労働者が請求したときに交付される定めです(労働基準法22条1項)。同条3項では請求していない事項を記入してはならないとされており、何を証明してほしいかは請求する側が決めます。雇用保険に加入していた場合、失業給付の手続きに必要な離職票が届かないときは離職票がもらえないときの手順、給付の手続きは自己都合退職と失業給付をご覧ください。
アルバイトでも権利は同じ
ここまで挙げた条文は、正社員かアルバイト・パートかで適用が分かれるものではありません。「バイトだから簡単には辞められない」という法律上の根拠はなく、期間の定めのない雇用契約であれば、アルバイトでも上に引用した民法627条1項がそのまま当てはまります。人手不足を理由に応じてもらえない場合はパートを辞めさせてくれないときの対処法、正社員として働いている場合は会社員が辞めたいときにまとめています。
店側とのやり取りが難しいとき
連絡そのものが難しい場合は、退職代行の利用も選択肢になります。ただし運営主体によって根拠となる法律と対応範囲が異なります。弁護士・弁護士法人は代理人として交渉できます。労働組合は労働組合法6条にもとづく交渉権限を持ち、正当な理由のない団体交渉の拒否は同法7条2号で禁じられています。民間企業については、会社との交渉にあたる行為が弁護士法72条との関係で問題になると一般に解されているため、対応範囲を依頼前に確認してください。類型ごとの違いは退職代行の運営主体3類型、各社の料金と運営主体は退職代行の料金データベースで確認できます。掲載順は提携の有無に影響されません。
似た立場の人へ
参考文献
参考文献:e-Gov法令検索 民法/労働基準法/弁護士法/労働組合法/厚生労働省 総合労働相談コーナーのご案内/厚生労働省 こころの耳 最終更新:2026年8月

