新卒で退職代行を使うのは甘えか|入社1年目で辞めるリスクと現実的な手順

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結論:甘えかどうかより「合理的かどうか」で判断する

「新卒で辞めるのは甘えか」という問いに、法律は答えを持っていません。法律が定めているのは「辞められるかどうか」と「そのとき何が起きるか」だけです。気になっている点ごとに、どこを見れば答えが出るかを整理します。

気になっていること制度上の整理根拠・確認先
1年目でも辞められるのか期間の定めのない雇用なら、いつでも解約の申入れができる民法627条1項
研修費を返せと言われたあらかじめ違約金や賠償額を定める契約は禁止されている労働基準法16条
有給休暇は使えるのか法定の年次有給休暇が発生する時期は法律で決まっている労働基準法39条1項
求人票と労働条件が違う労働条件を明示することは使用者の義務労働基準法15条1項
失業給付はもらえるのか受給資格には被保険者期間の要件がある雇用保険法13条1項/ハローワーク
退職代行は必要か通常どおり手続きが進む職場であれば不要(条文ではなく状況による判断)

新卒が言い出しにくいのは、あなたのせいではない

新卒は、社会人として最初に経験した職場がその会社しかないため、いま起きていることが一般的なのかどうかを比べる相手を持っていません。加えて、採用や研修に会社が費用をかけたことを繰り返し伝えられる立場に置かれやすく、辞める話を切り出すこと自体が裏切りのように感じられます。これは忍耐力の問題ではなく、比較対象がないという構造から生じるものです。

「石の上にも三年」という言葉もよく使われますが、勤続年数は法律上の退職の条件ではありません。

早期離職は珍しいことではない

厚生労働省が公表している「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」によると、就職後3年以内の離職率は、新規大学卒就職者が34.9%、新規高卒就職者が38.4%でした。

同じ調査では、大学卒の3年以内離職率が従業員1,000人以上の事業所で28.2%、5人未満で59.1%と、規模による差も公表されています。早期離職は個人の資質だけで説明できる現象ではありません。

新卒1年目でも退職のルールは同じ

期間の定めのない雇用契約であれば、根拠になるのは民法627条1項です。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

この条文は勤続年数や年齢を条件にしていません。新卒であること、試用期間中であることを理由に別の規定が用意されているわけでもありません(試用期間中の退職入社1ヶ月で辞めたい場合)。

就業規則に「退職の1か月前までに申し出ること」といった定めがある会社もあります。この定めと民法627条1項のどちらが優先するかは見解が分かれる論点で、一律に言い切れるものではありません。実務的には、就業規則を確認して余裕をもって申し入れるほうが手続きは進みやすくなります(退職の2週間ルール利用の流れ)。

立場によって前提が変わる

民法627条1項は「期間の定めのない雇用」の規定です。同じ新卒1年目でも契約の形が違えば前提が変わるため、自分がどれに当たるかを雇用契約書または労働条件通知書で確認してください。

立場退職を申し出るときの前提確認する書類
期間の定めのない正社員民法627条1項による就業規則の退職に関する条項
契約社員など有期契約期間の途中で辞める場合は考え方が異なる契約書の契約期間・更新の定め
パート・アルバイト契約期間の定めがあるかどうかで変わる契約書の契約期間欄
公務員民間企業とは法体系が異なる所属先の規程・人事担当窓口

有期契約の考え方は期間工・有期契約の退職パート・アルバイトの場合、公立学校の教員は教員の退職を参照してください。公務員は民間向けの退職代行の対象外とされることがあります。

研修費や奨学金の返還を求められたとき

新卒に多いのが「早く辞めるなら研修費を返せ」と言われるケースです。関係するのは労働基準法16条です。

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

この条文が禁じているのは、あらかじめ違約金や賠償額を決めておくことです。「1年以内に退職したら研修費を返還する」といった取り決めは、同条の趣旨に触れうるものとして問題になります。

一方で、費用の性質が労働者への貸付といえるかどうかが争点になることもあり、契約内容によって判断が分かれます。一律に有効とも無効とも言えないため、争いになりそうなときは契約書の該当部分を持って労働基準監督署や弁護士に相談してください(退職時の損害賠償請求)。

入社1年目の有給休暇はどうなるか

退職前に有給休暇を消化したい場合、入社1年目は前提の確認が必要です。労働基準法39条1項は次のように定めています。

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

上の条文のとおり、法定の年次有給休暇は勤続期間と出勤率の要件を満たしてから発生します。会社が独自に前倒しで付与している場合を除き、入社間もない時期には法定の年休がまだないことがあります。就業規則と勤怠システム、給与明細で残日数を確認してください(有給休暇を拒否されたとき)。

求人票や説明と労働条件が違うとき

勤務地・職種・給与・残業の実態が説明と違っていた、という相談も多くあります。労働基準法15条1項は、労働条件の明示を使用者の義務としています。

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

ただしこれは明示の義務を定めた規定であって、書面がなければ契約が無効になるという規定ではありません。労働条件通知書、求人票の控え、実際の勤務時間の記録を残しておくと相談の材料になります。相談先には、都道府県労働局や労働基準監督署の総合労働相談コーナーがあります。

退職を伝える相手と順番

「誰に、どうやって言えばいいのか」の段階でつまずくときは、順番を決めておくと動きやすくなります。

  • 雇用契約書または労働条件通知書の使用者欄で、契約の相手方が誰かを確認する
  • 就業規則の退職に関する条項(申し出の期限・様式・提出先)を確認する
  • 直属の上司に口頭で伝える。伝えた日付と相手はメモに残しておく
  • 退職届は書面で出す。会社所定の様式があるかを先に確認する
  • 有給休暇の残日数を踏まえて最終出社日と退職日を決め、貸与品の返却と退職後に受け取る書類の受け渡し方法を決めておく

引き止めへの対応は退職の引き止め、退職届を受け取ってもらえない場合は退職届の受理を拒否されたとき、返却物と受け取る書類は私物・貸与品の返却離職票がもらえないときを参照してください。

辞める前に確認しておくこと

新卒1年目の退職で見落とされやすいのが、雇用保険の受給資格です。雇用保険法13条1項は次のように定めています。

基本手当は、被保険者が失業した場合において、離職の日以前二年間(略)に、次条の規定による被保険者期間が通算して十二箇月以上であつたときに、この款の定めるところにより、支給する。

省略した括弧内は、疾病や負傷などで賃金の支払を受けられなかった期間がある場合に、この期間を延長する定めです。また同条2項には、離職の理由によっては要件をより短い期間に読み替える定めがあります。自分が読み替えの対象になるかはハローワークの判断になるため、辞める前に相談しておくと確実です(失業保険の基礎知識)。

お金の準備は「何か月分」と決め打ちするより、固定費を書き出して逆算するほうが現実的です。家賃、国民健康保険料、国民年金保険料、住民税、毎月の引き落としを並べてみてください。保険料や住民税の額は窓口で試算してもらえます(転職先が決まっていない退職)。

可能であれば、在職中から転職活動を始めておくと収入の途切れる期間を短くできます。次の勤務先を検討するときも、労働条件は書面で確認してください。

在職中に相談先を持っておくと、条件を比べる材料が増えます。就職支援は公的機関にもあり、全国の新卒応援ハローワークでは、学生のほか卒業後おおむね3年以内の人も対象に、担当者制の個別支援を無料で受けられます。若年層向けの窓口としてわかものハローワーク、地域によってはジョブカフェもあります。

民間の転職エージェントも無料で使えます。第二新卒・既卒に特化したところとしては、UZUZ(ウズウズ)のように、面談を通じて求人を紹介するサービスがあります(PR)。公的窓口と民間サービスは併用できるので、どちらかに絞る必要はありません。いずれの場合も、紹介された求人の労働条件は書面で確認してください。

心身の不調が続いている場合は、手続きより先に医療機関の受診を検討してください。働く人のメンタルヘルスについては、厚生労働省のポータルサイト「こころの耳」で相談窓口が案内されています(限界のサイン)。

退職代行を使うべきケース・使わなくていいケース

上司に伝えれば普通に退職手続きが進む職場なら、退職代行は不要です。使う意味があるのは、退職を切り出したら威圧・恫喝された、人事や上司が取り合ってくれない、出社すること自体が心身の限界、というケースです。

依頼する場合は、運営主体によってできることの範囲が変わります。未払い賃金の請求など交渉が必要になりそうなときは、この点が結果を左右します(運営主体ごとの違い)。料金は各社の公式情報を確認した料金データベースにまとめています。

よくある質問

Q. 研修費を返さないと退職できないと言われました。
返還の取り決めの有効性と、退職の申し出ができるかどうかは別の問題です。取り決めの有効性は契約内容によって判断が分かれます。

Q. 退職代行を使ったことは転職先に伝わりますか。
提出書類ごとに、記載される内容と提出先が異なります。書類の切り分けは退職代行と転職への影響で整理しています。

Q. 退職届を受け取ってもらえません。
受け取りを拒まれた場合の考え方と、記録が残る形で意思表示をする方法は退職届の受理を拒否されたときにまとめています。

似た立場の人へ

参考文献:e-Gov法令検索 民法e-Gov法令検索 労働基準法e-Gov法令検索 雇用保険法厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」厚生労働省 労働局・労働基準監督署・ハローワーク 最終更新:2026年8月

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この記事を書いた人

深町 悠のアバター 深町 悠 フリーランスライター

フリーランスライターとして複数のメディアで執筆に携わる。退職代行データベースでは、記事を作成する際に法令や厚生労働省の公開情報など一次情報にあたることを徹底している。

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